【メルマガ】プライバシーとコロナ対策 前編:第142号

【メルマガ】プライバシーとコロナ対策 前編:第142号

☆リテラジャパンメールマガジンは「日本初のリスクコミュニケーション専門メルマガ」☆
リスクコミュニケーション、通称リスコミは近年、その必要性が重視されてきている“技術”です。社会ではさまざまなリスクが喧伝されています。食の安全は脅かされ、医療は信頼できない、と。しかし、それは本当でしょうか。リスコミはリスクを冷静に分析し、専門家の知識と社会を直接に結びつける技術です。
メールでは、独自書き下ろし、リテラジャパンが主宰している勉強会「場の議論」での、食、医療、環境の議論を「実況中継」し、リスク議論を深める場を提供しています。

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Litera Japan メールマガジン第142号  (2020年9月11日配信)

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○プライバシーとコロナ対策 前編
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残暑お見舞い申し上げます。皆さま、お元気でしょうか。
リテラジャパン 西澤真理子です。

今日は911です。19年前のこの日、NYのTwin Towerにテロリストがハイジャックした飛行機が突っ込んでいった光景を思い出します。
衝撃の事件から、リスクやセキュリティに対する考えが変わって行った記憶があります。

しばらくご無沙汰している間に、お陰様でクラウドファンディングからの資金を獲得し、
飲食店支援の事業を展開しています。
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現在、レッスン希望店を募集中!どうぞご連絡ください。
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さて、これまで新型ウィルスについてメディア媒体で書いていました。
今日はこれまでに書いたものから【拡大版】をメルマガ読者皆さんにご紹介していこうと思います。

共同通信 47News 7月21日配信の以下の記事の拡大版です: 「夜の街」を責めるよりも優先すべきこと-コロナとマイノリティーを考える-https://this.kiji.is/657848631922230369?c=39546741839462401

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プライバシーとコロナ対策 前編
「夜の街」を切り離すことこそが分断と感染を広げる
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西澤真理子 リスク管理・コミュニケーションコンサルタント

新型コロナウイルスに感染したくない。それは誰でもが思うこと。だけれどもそれは、夜の街で働く人、セクシュアルマイノリティの世界ではより、切実だ。なぜならば、どこで、誰から、どのように感染したかを簡単には話したくない、話せない事情があるから。コロナには誰でもが感染するかもしれない。
であるならば「夜の街」を忌諱し、責めることで分断を招くより、予防策、対処法を丁寧に伝え共有する方が対策としてはより効果的ではないのだろうか。

筆者は主宰する「夜の街応援!プロジェクト」の一環で、新宿区、横浜市のホストクラブやバーなどを対象に、
感染に詳しい公衆衛生医で、新宿二丁目営業再開のためのガイドラインを監修した岩室紳也医師と共に、コロナ対策を店舗と共に考える「レッスン」を行っている。
とりわけ、東京で最大規模のセクシュアルマイノリティ・コミュニティがある新宿二丁目には、小さな店が密集、
店舗が狭く、独特の親密さと雰囲気を醸し出している。だが一方、それが、「3密」(密接、密集、密閉)で、新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)を生む条件が揃いがちと言われている。

先日、新宿二丁目のNPOが主宰し、医師、保健師などの専門家に具体的な予防策を聞く勉強会に出席する機会があった。勉強会は正確な情報を収集し、共有しようという趣旨だ。感染予防を知ろうという積極的な姿勢を感じる。
勉強会の参加者は男女合わせて約30名くらいだろうか。お店が開店する前の午後、1時間ほどの時間だった。
入り口にはアルコール消毒液が置いてあり、まずは入り口で手を消毒することを求められた。誰もがマスクをしている中で、会が始まった。

最初は感染症の医師の講演。
「感染経路を知ることが大切です。全ての感染症では「スーパースプレッダー」と言う、感染者の1~2割の人が沢山に感染をうつし二次感染を引き起こしています。コロナウイルスでは「3密」という
環境のリスクが高いことも分かりました。狭い空間で人が密集しているなど、「密」になっているところで大きな声を出すと、長めに飛沫が空気中に滞在しますから、換気が大切。今の時期、予防についてはかなり周知されました。
それでもまだやれる。マスクを取る際に手を洗う、消毒は忘れがちだが重要です。ウイルスがマスクの表面についているかもしれない。
何より敵を知る。100%ゼロリスクはないから、確率を下げる工夫をするのです」。

以前は保健所に居たという別の医師はこう話した。「陽性者が来店することはあり得るとして考える。飲食店のリスクは、飲食する際マスクを取ること。医療機関とは違う難しさがあります。飲食店ではだから、
(つばで感染させる)飛沫感染のコントロールは難しい。
だけれども、グラスやテーブルなど、周辺物を清潔に保つことで、(飛んできた唾が付いたことで感染が発生する)接触感染はゼロに近づけることは、予防策を知ることで可能。一緒に飲食している人からの感染はある意味仕方がない。だけれども、同じ空間に居る他のグループからの感染を低くすることを考えるべきでしょう」。さらにこう強調した。「コロナの陽性になることは不可抗力。だから安心して保健所に相談してもらいたい。それが早く感染経路を突き止め、感染連鎖を切ることにつながるのです」。

続けて保健師はこう問いかけた。「現在感染が広がりつつある中で、感染経路不明が目立ちます。半数位でしょうか。感染場所を言えない事情があり、保健師も濃厚接触者について感染源の情報、環境、行動を聞きだすことが難しい。もちろん、無理に聞きだすことはしません。でもこれがコロナ対策の大きな課題です」。

これらの話には参加者の多くが聞き入っていたが、なぜ難しいか訴える声も上がった。

「先生方のお話はよく分かるし、情報共有の大切さも分かります。だけれども、コミュニティに来るお客さんには匿名性があるのです。ほぼほぼクロゼットと言ってもよく、素性が分かってしまうのはお客さんにとっても店側にとっても「恐怖」とも言えます。
だから、たとえ感染しても、お客さんはお店には言えるけれども、保健所には言えないし、だから、言わないケースが多いのでしょう」。

「多くの店は真面目に対策を取っています。(飛沫が飛んでいかないよう)パーティッションを設置したり、
カウンターをビニールシートで覆ったり、マスクをしたりしています」

「今日もこの勉強会を主催したことが僕たちの意思表明です。自分の店が感染源になることを最も恐れているからです。このコミュニティからクラスターを出せないし、出したくない。」「感染経路を理解したいのは、こう動いたとしても、こう動けば大丈夫という感染予防を自分たちが確実に知りたいからなのです」。

やり取りを聞いていて、参加者の感染予防を知ろうと言う真摯な姿勢と、その裏腹にある切実さも感じた。

それは、職場や家族という自分の生活圏で、もし自分が陽性者だった場合、濃厚接触者調査の中で、どこで感染したのかが、何かの手違いで開示されてしまった場合、自分の素性が分かってしまう事情があるからだ。だがこれは、陽性者(患者)から濃厚接触者を聞きだし、濃厚接触者全員がPCR検査を受けるという、現行のクラスター対策、二次感染防止の対策の大きなハードルとなる。濃厚接触者とは、居住を共にしている者、長時間接触があった者(車内、航空機内など)、約1メートルで感染予防策なしで患者と15分以上接触があった者などを指す。

陽性患者の情報を開示できる場合とできない場合では、保健所の対応は異なる。情報が開示できない場合、本人から濃厚接触者への連絡窓口を聞きだし、患者の情報を伝えずに匿名の利用者が感染したことが分かったこと、接触の可能性があることから訪問調査したい旨を保健所がメールや書面などにて伝え、実際に訪問(電話)して調査を実施する。

場合によってはお店の入り口に掲示を検討してもらうなどの手段があるという。保健所の調査は時間も労力もかかる。

保健師は会場にこうも訴えた。「保健師は基本的に看護職。専門の訓練を受けている職種で、調査官でも捜査官でもありません。
地域の医療を共に考えていくパートナー。経験から言えることは、陽性者を責めるよりも気軽に相談できる、言える環境が必要。我々はAIDS/HIVの経験があり、セクシュアリティについては普通の人より勉強しています。気軽に保健所の戸を叩いて欲しい」。

「相談の大切さはよく分かる。だけれども、多くが韓国の例にショックを覚えた。ロックダウン解除後、ソウルのナイトクラブでクラスターが起きた。参加者はゲイコミュニティでほぼ匿名だった。だから保健所は、クレジットカードの情報を入手し、参加者を追って、押しかけていったと聞きます。そんなことは日本では起きないと思うけれども、こういった問題例が実際に発生しているとどうしても不安を覚える」。(続く)

*関連記事もあわせてお読みください。

7月5日配信「夜の街」対策、なぜできないか 感染症医と歌舞伎町に出かけて気づいたこと
https://this.kiji.is/651682683773781089?c=39546741839462401
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2020-09-13T15:16:57+09:00 2020.09.13|Categories: メルマガ|